なにをすればいいの?~若者達の悪戦苦闘~①【DTP集中訓練プログラム7期生報告集より】
『DTP集中訓練プログラム』とは?
この報告集は、厚生労働省の委託事業として実施している若年無業者等集中訓練プログラム(通称:集中訓練プログラム)の一環として制作されました。
このプログラムでは、地域若者サポートステーションに登録した若者が一定期間ともに活動し、コミュニケーションスキルを培ったり、生き方・働き方などについて模索しながら多様な学びを体験するものです。
今回は、この『DTP集中訓練プログラム』の第7期生の報告集※より、記事を一部抜粋し、5話連載でお送りします。
※「働くことへの不安や抵抗感」を感じる若者たちが、「将来に希望がありそうな気がする」と思えるようになった悪戦苦闘の日々や、若者たちが日ごろお世話になっている事業所の方々のインタビュー、OBたちの言葉が詰まった報告集は、現在『むさしの地域若者サポートステーション』にてご覧いただけます。
はじめに
DTP(卓上出版の略称)集中訓練プログラムはNPO法人文化学習協同ネットワーク(以下協同ネット)むさしの地域若者サポートステーション(以下サポステ)の支援事業の一環であり、今7期は3人の若者が集った。
当初5月から始まり11月頃に終わる予定だったが、コロナウイルスの影響により始まる時期が延びてしまい7月から始まる事となった。
3人は微妙に参加までの経緯が違うが、共にサポステの運営する居場所に通う若者だ。
今期のDTP集中訓練プログラムでは前期までの流れを汲み、3人がそれぞれのテーマを持ち寄り執筆していくチーム制作という形で進行した。テーマを決めるための話し合いの中で、それぞれ三者三様のテーマが出てきた。
「トラウマを乗り越える」「企業への不信感」「居場所から次のステップへ」というテーマは一見統一感があまり感じられないが、詳しく掘り下げていくと薄(う)っすらと共通点が見えてきた。
自己への葛藤、悩みや苦しみ、社会への不信感や不安、社会へ繋がる為の多様な手段の模索等を個々が考え、学び、その過程で多くの人々と出会い、時に共感し、時には相容れなかったり。
紆余曲折しながらも、サポステ職員の皆さんや、様々な企業や団体、現在サポステに繋がっておられる親御さん、そして多くの若者たちのお力添えあってなんとか完成に漕ぎつける事が出来た。未熟者たちが模索しながら作ってきた冊子だが、何か感じてもらえるものがあれば幸いである。
サポステからつながる
私のテーマは、サポステのプログラムに参加し、次のステップを考えたとき、大きな不安感から始まった。私が活動しているむさしの地域若者サポートステーションでは、様々な団体とのつながりがある。その中から、企業や団体、若者にインタビューを試み、取材させてもらい、なにかヒントを得て私の大きな将来不安の解消ができないかと考えた。
私の不安の出発点
私がその将来不安の問題について自覚したのは、中学に行かず、家でゲームをやり、外では本屋や大型家電量販店などをうろついたりしていたひきこもりの初期の頃だったように思う。その頃の私はふとしたきっかけで学校を休みだし、学校に出た時の級友たちの反応について悪い想像を巡らせ、更に行きづらくなるという悪循環に陥っていて、視野も狭くなっていたように思う。
暗い想像をしては諦める…
そんな中で、将来自分はどんな大人になるのだろう、そもそも自分は「普通」の大人になれるのだろうか?といった不安を漠然と持っていた。「普通」に大学に行き、「普通」に就活を経て、「普通」に就職をする。そうした同期の友人たちが進むだろう「普通」の将来に自分は入っていけるのか、自分はもう彼らと同じ道に進んでいくのは無理なのだろうと、そんな暗い想像をしては諦める…。この考え方は、今も私の中で大きな影響を与え続けている。
こんな風に生きるのもアリだな
サポステで、いろいろなプログラムに参加していると、サポステでの経験を経て就職し、現在は面談だけという人も居る。彼らも、自分と同じような悩みや経験もしているのに、サポステや交流スペースのリンクから、更に次の社会へと、悩みながらも参加しているようである。そのような彼らの姿は、私が今なりたい姿であり、進みたい道へと歩いているように感じられる。
彼らや、彼らの就労を促すためにサポステと連携した活動をしている会社、既にサポステという居場所を卒業した人たちの話を聞くことで、次のステップについてどう踏み出すか、どうやって人生を設計していくのかについて考えていきたい。
また、あわよくば、それらの経験を元に「私たちにはこんな働き方がある」、「こんな生き方でもいい」といった、こうしなければならないではなく、こんなふうに生きていくのもアリだなと思えるようなものを発見できたらいいなと考えている。
企業への信頼の揺らぎ
「24時間戦えますか?」
バブルが崩壊した頃から年功序列や終身雇用が保証されなくなってきている、そんな風潮からブラック企業やサビ残などの言葉が生まれ、「24時間戦えますか?」というCMも流れるほど長時間労働が常態化してきた。氷河期世代からは学校卒業から就職する流れにうまく乗れない人が非正規やひきこもりなどになってきている。そんな中で企業に対する不安や不信感を抱きながら働いている人が多く、働く前の段階にいる引きこもりも企業や働くことに対して不安を抱えて前に進めない状況だ。
ブラック企業への恐怖
私がテーマを「企業への不信感」にした理由は、幾つかの要因が挙げられる。そもそも大学生の時の就活で志望していたIT業界では長時間労働が当たり前になっており、うつ病になる人も多いという話も聞いて不安に思っていたが、その時はそこまで気にせず就職活動を続けていた。その後大学卒業しひきこもり始めた辺りからネットやテレビで、長時間労働による過労死や残業代未払いのニュースについて目に留まるようになっていった。また友人や身内に長時間労働や人間関係でうつ病になり会社に行くことすらままならなくなっていたという話を聞いたことも要因の一つになっているのだと思う。さらに自分自身の性質として新しい事へ挑戦するときに考えすぎて不安になり行動に移せなくなる等の理由から働くことに対する不安に繫がっていったことが今回このテーマを挙げた理由になる。
このような理由から「自分が就職した場合、労働環境が悪く長時間労働やパワハラがあるようなところでは?」「その結果、うつ病になったり過労死してしまうのでは?」と考えたり、前期の人たち(第6期の集中訓練プログラムの冊子テーマ『私たち若者が「働くこと」について考える』)との共通部分があるのだが、人間関係や能力、健康的な理由などについて不安を感じ、企業から出る求人情報やそこに勤める人の話を信じていいのか、と考えるようになった。
不信感を軽減したい
テーマについての話し合いの間ずっと、働くことや企業に対する不安ばかりが出てきていたのだが、それではいけないと思うようになっていった。その不安や不信感を少しでも緩和していける方向に持っていくことはできないか、そうするにはどうしたらいいかを企業の方と話し合ったり今後のチャプターを通して探っていくとともにその中で自分はどう感じたのかをまとめで書いていきたい。
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