なにをすればいいの?~若者達の悪戦苦闘~③【DTP集中訓練プログラム7期生報告集より】



『DTP集中訓練プログラム』とは?



この報告集は、厚生労働省の委託事業として実施している若年無業者等集中訓練プログラム(通称:集中訓練プログラム)の一環として制作されました。

このプログラムでは、地域若者サポートステーションに登録した若者が一定期間ともに活動し、コミュニケーションスキルを培ったり、生き方・働き方などについて模索しながら多様な学びを体験するものです。


今回は、この『DTP集中訓練プログラム』の第7期生の報告集※より、記事を一部抜粋し、5話連載でお送りします。


※「働くことへの不安や抵抗感」を感じる若者たちが、「将来に希望がありそうな気がする」と思えるようになった悪戦苦闘の日々や、若者たちが日ごろお世話になっている事業所の方々のインタビュー、OBたちの言葉が詰まった報告集は、現在『むさしの地域若者サポートステーション』にてご覧いただけます。



NPO法人わかもの就労ネットワーク



今回NPO法人わかもの就労ネットワークという団体にインタビューして、どういう団体なのか、どういった活動をしているのかを聞いてみた。



体験からスタート



「体験からスタートし、体験の中でお互いを知り変わっていく、社員に優しい、社員を育てていく企業を増やしていくこと。」

そう語るのは就労ネットの代表理事を務める、有限会社ユタカサービス会長の森下さんだ。その理念に共感した様々な業界の社長さんや若者支援事業者の方たちがとりくみに参加してる。

主な活動は、職場体験を受け入れる企業を探しサポステと連携して体験に繋げることだ。また、企業に対して就労ネットやサポステ、若者の情報を発信する。また実際に体験に繋がったがスムーズにいかなかった時、企業の中で若者を受け入れる為の勉強会を開いたりなどの情報の共有をしている。実際に体験していけば良い関係ができていく。例えば社員に受け入れ方をどうやって浸透していくかなどがテーマになる。



若者のことを考えてくれる人たち



社長さんたちに話を聞いて、今までは職場では本音を言ってはいけないと思っていたが、本音を言っても良いものなのかと感じた。また「仕事の中身だけでなく待遇も含めてトータルで見て若者が楽しいと思ってくれるか」を考えてくれていることにとてもグッときた。

仕事のやりがいのみを求め、私生活の充実より仕事を優先しなければならないイメージを持っていて抵抗があったが、この社長さんの言葉は自分たちのことを考えてくれているのではと感じた。

「もし興味がなかった業界で働くことになったとしてもその仕事に興味を持ってみてほしい、知ることで知識がついてきてだんだんと面白くなってくる。」と言ってくれた社長もいた、私の友人がこれを体現していて、仕事のことを楽しそうに話してくれたので納得だなと思った。

今回のインタビューで、私はまだ半信半疑なところもあり、いざ自分が動き出した時のことを想像するとまだまだ不安が残る部分が多々あるが、自分たちみたいな若者について関心を持ってくれていたり、どう就労につなげていくか、どんな働き方がよいかについて考えてくれる団体や企業があるということを知れただけでも、今後自分が動き始めるときに不安を和らげるきっかけになってくれるかもしれないと少し感じている。



就労ネットの参加企業でサポステからも若者を受け入れている、光栄商事の内田社長に、会社の事や、若者への印象、仕事への入り方など話を聞いた。



光栄商事は建築資材の販売を中心とした業務を行っている会社で、グループ会社も合わせて、10人ほどの若者をねりまサポステから受け入れている。この会社、社長の話は、私たちがいる三鷹の居場所「リンク」でも時折聞くことがあり、「その度に、そんなにいい会社なの?自分からすれば雲の上の存在だ」という印象を持っていた。



どのように若者をとらえているのだろうか



内田社長が最初に話してくれたのは「企業側でも新人用の仕事はある。慣れてくれたらいいなという感じ。本人が飲みこんでくれるのを待っている」という話だった。しかし私は、覚えることが多くついていけず、仕事に慣れられず、結局心折れてやめてしまうのではないか、と感じていた。

これまで思っていた私の仕事というものへのビジネスライクな、出来る・出来ないで判断されるような場所だという印象は、実際のところどうなのだろうか。またそんな私たちを受け入れている側はどのように見ているのだろうか。

社長はねりまサポステの若者を受け入れてみて「本当にいろいろな人がいる。私から見ると十分働けるんだけど、本人の自信の無さが全面に出ていて、迷いが出ている」と話してくれた。

実際に光栄商事で働き始められた若者たちの中にも、どうしても仕事を続けられないという状態になってしまう人もいるらしい。仕事の出来云々というよりも、仕事への自信が生まれるまで続けることが出来ずに途中で続けることを諦めてしまう印象があるそうだ。社長としては、今までの経験から続けていてくれれば、十分仕事を任せられるようになれるのにと思っていると話してくれた。



「ここにいてもいい」と思ってもいい?



個人的にも、自分から無理だと思ってしまう心の動きには、共感するものがあった。自分への不信感から、会社に貢献出来ているのか、邪魔だと思われていないかなど、悪い想像をして自分から諦めてしまっていた。

そうした心の動きを転換して、そこまで重く感じなくても仕事はできる、そこにいてもいい。そう思えるにはどんなことが必要なのだろうか。

内田社長が繰り返し話してくれたのは、「遅いことをこちらとしては問題とは思っていない。早いことより、間違わないことが大事だと思っている」、「仕事をしっかり覚えて、きちんと返せれば、信頼が出来ていく」という内容だった。

間違えないことや、仕事を覚えるための質問、コミュニケーションについて、上手くできる自信がないと言った私たちに、会社の方でもその認識は持っていて、日報の内容を変えたりして、何を考えているのかということを知ったり、次に向けた話し合いをしたりして、若者が仕事に入りやすい様に工夫をしていると話してくれた。

「遅くてもいい」「居てもらえると助かる」「そういう風に考えずに働ければ」そう話してくれた内田社長の話に、仕事が出来るだけが会社の価値観ではないのかもしれないと感じた。



ここなら信頼できるかもしれない



光栄商事では若者を受け入れるときに、カタログ作りから入る。これは、カタログ作りが、作業の仕方などの面で分かりやすく比較的に簡単な仕事だという事があるらしい。

実際、カタログ作りを経験した若者は「こんな仕事もあったのか」や「これなら出来そう」と話してくれる人もいるそうだ。そうしてカタログ作りから仕事の仕方等を学んでいく。その後、仕事に慣れてきた段階で自分と合う仕事、やりたい仕事にも入ってもらい、より理解を深めてもらうという流れをとっているそうだ。

会社にとって若者がどういう存在なのかについて、思った以上に自分たちに関心を持ち、考えてくれているのかもと感じた。

光栄商事ではねりまサポステとやりとりをしながら若者を受け入れ、何かあったりするとサポステの方と話し合いを行っているそうだ。光栄商事の様に、自分たちのような若者のことを理解しようとしてくれる企業で働けたら、私たちの不信感や抵抗感も薄れるのかもしれない。

このインタビュー中、内田社長は自分たちが感じる不安や抵抗感について、真剣に聞いてくれていた。こちらの疑問などにも真摯に考え、自分の考えや経験を話してくれていた。

インタビューが進むにつれ、自分の率直な印象や、疑問など、いろいろな話が出来たのは、内田社長がインタビューの中で見せてくれた若者に対する姿勢が、自分にとって信頼できるものだったからだろうと思う。

あるいは、こうした率直にものが言える、話が出来る、そういった信頼関係が会社や社長との間に築ければ、長く続けることが出来るのかもしれないと感じた。

Youth Lab

1974年より、子どもたちの学習支援や不登校児童の居場所づくり、 若者の社会参加や就労支援を行ってきた、 文化学習協同ネットワーク(認定NPO)と若者たちが出会う人や世界について、 そして、若者たちが自分自身を再発見するための学びの時間について発信していきたいと思います。