ムサシノPeople interview vol.2②


ムサシノPeople interview


私たちが暮らしている地域には、人や街を大切に思いながら日々活躍している方々がたくさんいらっしゃいます。協同ネットに集い活動している若者たちも、そういった地域の方々に日頃から大変お世話になっています。

そんな日頃お世話になっている地域の方々のこれまでの人生にフォーカスしたお話をお聞きすることで、再び出会い直し、たくさんの刺激を受け、人生について考え学びたい!そしてもっともっと知り合いになりたい!という、ちょっぴり図々しい連載企画です。


ムサシノPeople interview vol.2②

中道通り商店会会長 坂井 健司 さん

株式会社プランニング・ジーン、株式会社PGスクエアの代表取締役

中道通り商店会会長、吉祥寺活性化協議会副会長


ABOUT /  坂井健司さん


略歴 高校時代から吉祥寺の街を遊び場に育ったこともあり、2002年企画運営会社を吉祥寺にて起業し、2005年中道通りに日本茶カフェ「おちゃらか」を出店したことを機に商店会活動を開始されています。

協同ネットの若者たちは、今年の年始に「武蔵野吉祥七福神めぐり」にボランティアスタッフとして参加させていただきました。昨年は他にも「青空市」や「なかよし祭り」など武蔵野市で開催されるイベントに沢山参加させていただいており、コロナ禍でイベントのない今の日常をとても寂しく感じています。

そんな中で、これからも武蔵野市との繋がりをつくり続けたいという思いと、勉強させていただきたい気持ちも含めて、今回は武蔵野市の地域活動で活躍されている坂井さんにお越しいただきました。


若者(インタビュアー)

なつみかん:ベーカリー研修を経て、現在はカフェ店勤務。地域の人たちにおいしいコーヒーを日々入れながら、将来は自分で店を出したいと考え、現在情報収集中。

おとくさん: DTP研修を経て、DTPデザインやグラフィックデザインの分野で働くことを目指し、現在就職活動中。

さっちゃん:おとくさんと同様、DTP研修を終えたばかり。現在、NPO法人わかもの就労ネットワークの「DEXIT」に登録し、就職を見据え、職場体験中。


スタッフ(インタビュアー)

廣瀬、丸山



何かアクションを起こさないと次の化学反応は起きない



→なつみかん 起業する上で大事だと思うことって何でしょうか?



なつみかん 僕は一応いろんな人に(起業する上で何が大事か)聞いてみようかなとか思った時期もあって。すると皆「人脈、人脈」って言うんです。でもそれだけじゃ無いだろうなとは思うんですけど。


坂井 僕はね、たぶんやって初めてわかることとか、やって初めて繋がる人沢山いると思うから、まず「やる」ことじゃないかと思う。


「やる」っていうのはいきなりお店を開いて作るということじゃなくてもいいと思うんだけど、やっぱり順番に準備ってあると思うんです。

その準備のアクションは、いろんな形でスタートを切れると思うんです。


でも、どこから切るかっていうのは個性だと思うので、それは自分で決めればいいと思うんだけど、何かアクションを起こさないと次の化学反応は起きないと思う。


だから僕は今でも思っているのは、常に何かを始めるんだったら、動いてからじゃないと何も決まらないんじゃないかって。色んな想像や妄想も沢山するんだけど、やってみて、自分の思った通りになんか行かないのよ、絶対。


で、その思った通りに行かないなって時に、どう修正するかとかも当然あるんだけど、それよりも自分がどう「やられないように」するかっていう心の持ち方も大事だと思う。


それは発見を楽しめるっていうか、思ってもいなかった方向でも何かしら発見がある訳だから、それを楽しむ「心」を持っているのは大事かな、とは思いますね。


で、あんまりネガティブな話をこれから起業したいって人にしたくないけど、ホント起業するのって大変なんですよ。だけど多分始める前はそんなに大変だと思ってないと思うし、なんとなく上手くいくような気がしてるんですよね。



やりたい事に近いことをまず見つけていく作業からやっていくといいんじゃないかな



坂井 でもやっぱりお金稼ぐのってホント大変だなっていうのはやった実感としてわかるから、その大変さに負けちゃうとなにもできないから。まずは自分が出来ること。


例えば、なつみかんくんが5年後になんかお店やりたいなと思ったら、例えば僕は35歳の時に決心して40歳までかかったんだけれど。それって5年後にそこから逆算で、ここのタイミングで何が出来ているといいのか?

例えばカフェをやりたいんだったら、どういうお店にしたいのかっていうグランドデザインがまずあるじゃない?


コーヒーのどこにこだわるかとか、どういう出し方にこだわるかとか、コーヒーに合わせるお菓子や料理は何にするか、どこまでそれをカフェとしてやるのか、とか。お店の雰囲気をジャズしか流れないお店にしたいなとか。

自分がやりたい事に近いことをまず見つけていく作業からやっていくといいんじゃないかなって思うんだよね。その根っこがしっかり固まっていれば、きっとぶれないし。


お客さんがいる場所だったらどこででも出来るから、そこで今度は経済的観念が入ってきて、ちょっと吉祥寺じゃ家賃高過ぎるし大変だから三鷹でやろうかなとか。そういうテクニックが入ってくるんじゃないかなと思う。宣伝はどうすればいいかとか。

例えば、今だったらなるべくお金かけずにやるんだったらSNSでどうやって発信していくかとか、「バエる」商品がないとな、とかそういう話になると思うんだけど。

でも自分の世界観がどこにあるのかっていうのは、うわべの話だけじゃなくて根っこのところをしっかり考えて、時間を使うといいんじゃないかと思うんですよね。


それがあって人脈だと思う。人脈だけじゃないけどね、勿論。


広瀬 なにかアクションしていく内に、人脈が生まれてくるというか。


坂井 そう、僕もそう思います。今はSNSがあるから自分が発信することで同じ方向を向いてる人と繋がりやすくなっている。

根っこがしっかりしてれば、きっと理解してくれる人はいるんじゃないかなって思います。




どこから来たか分からないような馬の骨でも受け入れてくれる街



→おとくさん 吉祥寺の何が良かったのか、吉祥寺の魅力について教えてください。また、吉祥寺ではどうやって遊ばれていましたか?



坂井 サブカル的な遊びから始まって、表から裏までいろいろ遊ばせてもらいながら、吉祥寺で人間力を磨いてきたという感じでしょうか(笑)


広瀬 先ほどから恩返しってお話されていて、恩返しを吉祥寺の街でしたいって思うくらい楽しい良い思いを経験されてきたんでしょうか?


坂井 そうですね、高校時代、大学時代遊ばせてもらったっていうのはすごくあるし、お金がなくてもお店に入り浸ってると一杯二杯普通に飲ませてもらったりね。

僕が住んでるところから近所だったということもあって、ちょこちょこ来てるうちに、何かしらの恩返しが街の人達に出来ないかなってすごく思ったのはありますよね。

で、どんどん知り合いも増えていくんだけど、その時点でもお世話になった人たちは既にたくさんいました。


今僕が商店街の活動をやっている大きな理由は、そういうお世話になった今の団塊の世代の人達の影響かな。

もう今70代位の人達とか、5つくらい上の先輩とかがやれやれと引き上げてくれて、席を作ってくれてたんだなって今すごく思うんですよね。


だからこんな、どっちかっていうと僕はここに住んでる訳じゃないから外来生物みたいなもんですよね。色々吉祥寺では遊んでるけど、でも地べた(土地)持ってる訳じゃないし。

で、やっぱり吉祥寺を動かしている僕らの前の世代の人達っていうのは圧倒的にこの地域に住んでいる人達で。


親の代からここで商売をやってるような、かなり保守的な人達が多い中で、僕みたいにどこから来たか分からないような馬の骨でも受け入れてくれる街だと思ったんですよね。




誰かがフラッグを挙げたら応援してあげようよという雰囲気が吉祥寺



坂井 中道で僕が店をやるのにあたって、そのカフェの店長を僕の知り合いのフランス人に頼んだんですよ。

で、どこから来たかわからない男とフランス人がいきなり、自分の住んでるところの近くで店始めるって結構周りの人はびっくりするじゃないですか、最初は(笑)


でも借りた場所のオーナー夫妻はすごく良くしてくれたし、目の前のビルのオーナー、皆おじいちゃん、おばあちゃんになっちゃったけど、特におばちゃま方がもう非常にかわいがってくれたりとかしてくれたので、あんまり苦労はなかったんですよね。


僕が大好きな先輩のひとり「一実屋」(平和通りにあるフルーツ屋さん)の前田秀樹さんって、僕より5つ上だったかな?もう亡くなられちゃったんですけど、もうホントかわいがってもらって。


僕はその前田先輩ににすごく可愛がってもらったことが、今もあるのかなってすごく思うし、逆に言うとその前田先輩の思いとかをやっぱり繋いで僕らは街に活かしていかなきゃいけないし。

もっと言うと、僕らの後輩、下の世代に吉祥寺の魅力みたいなものを伝えていかなきゃいけないなっていうのはすごく思うんですよね。


で、吉祥寺の良さって、コンパクトなこの町に、色んな、買い物だけじゃなくて、それこそ昔からサブカルっていわれた通りで、映画や音楽、いろいろ文化を発信していた。

今はなかなかそうは行けてないところもあるのかもしれないし、昔の遺産で食ってる街っていう感じもちょっとするんですけど。


何か若い子たちがやろうとしていることを応援してあげられるとか、もっと言うと別に若い人達だけじゃなくって、僕らより先輩もそうだし、僕らも含めて、誰かがフラッグを挙げたら応援してあげようよという雰囲気が吉祥寺の良さだと、僕は思うんですよね。


で、僕がそうされたからっていうのもあると思うんだけど、たぶん非常に門戸が広いと思うんですよ、実は吉祥寺って。僕はお店を出す時は、ちょっとハードル高いかなって思ってたんですね。


なんだけど、入り込んだら、めちゃ楽なんですよ。


だれかと知り合いになって一歩踏み込むと、そこからいろんなサポートが受けられるっていうのかな、簡単にいうと。で、どんどんいろんな人とつながってっちゃう。

自分が一歩踏み込んじゃえば、どうとでもなると思うんですよ。


ただ踏み込まないとずーっと距離がある感じがしますよね。




一つに染まらない魅力



そして、もう一つの吉祥寺の良さは、「一つに染まらない魅力」だと、僕は思うんですよね。


ある人に言わせると、それが個性が無い理由にもなっちゃってると思うんですよ。

けど、吉祥寺って何?って言われたときに、色んな魅力があり過ぎるし、世代によって見えてるものも違うから、結果なんかこう(個性が)無いんですよ。一言で語れない。


例えば渋谷だったら「若者の街」みたいな街のイメージ。


なんか吉祥寺って、色んな街の色んな要素がちょっとずつちょっとずつたくさんある街な感じがするんですよね。


広瀬 だからこその良さっていうのもやっぱりあるっていう気がしますけどねー。


坂井 そうなんですよ、だからダメって話じゃなくて、だからこそ色んな人が入って来られる街な気が僕はするんですよ。で、決して潰し合いがある街じゃないと思うんだよね。


広瀬 世の中には「違いを受け入れがたい」という側面があると感じていて。ちょっと自分たちのカラーと違うものを受け入れるのってすごく時間がかかったりするんだけど。

元々いろんなカラーを持ってる所なので、何がダメとか何が良いとかにならず、受け止める感じが吉祥寺にはあるんでしょうね。




若い世代の出店者や、チャレンジしたい人が来られるサイクルが生まれるようにしたい



→おとくさん 今後の商店会はどうなっていくと思いますか?



坂井 そうですねー。どうなっていくかっていう話は想像したり、吉祥寺の30年後を色んなところで議論をするんですけど。

中道通りっていう所にスポットを当てると、僕を筆頭に今の商店会の役員さんとか地域の人達が、中道通りの未来についてプラス方向で考えてくれるような議論のタイミングが増えていけばもっと良くなっていくと思うんです。


もっと若い出店者、今後お店にチャレンジしたいと思う人たちをどんどん受け入れてね。

でもお店のスペースっていうのはそんなに増えないので、やっぱり新陳代謝ですよね。


お店が無くなっても、また新しい所に若い世代の出店者が入るとか、チャレンジしたい人が来られるサイクルが生まれていくようにしたいな、とすごく思うんですよ。


なのでそれをやるためにはやっぱりお店を貸しているオーナーさんたちとちゃんと繋がって、中道通りをいい方向にするにはどうやったらいいかっていう建設的な議論が出来る会議や組織を作っていかないとダメじゃないかと思うんですよね。



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Youth Lab

1974年より、子どもたちの学習支援や不登校児童の居場所づくり、 若者の社会参加や就労支援を行ってきた、 文化学習協同ネットワーク(認定NPO)と若者たちが出会う人や世界について、 そして、若者たちが自分自身を再発見するための学びの時間について発信していきたいと思います。