ムサシノPeople interview vol.2④【最終話】


ムサシノPeople interview


私たちが暮らしている地域には、人や街を大切に思いながら日々活躍している方々がたくさんいらっしゃいます。協同ネットに集い活動している若者たちも、そういった地域の方々に日頃から大変お世話になっています。

そんな日頃お世話になっている地域の方々のこれまでの人生にフォーカスしたお話をお聞きすることで、再び出会い直し、たくさんの刺激を受け、人生について考え学びたい!そしてもっともっと知り合いになりたい!という、ちょっぴり図々しい連載企画です。


ムサシノPeople interview vol.2④

中道通り商店会会長 坂井 健司 さん

株式会社プランニング・ジーン、株式会社PGスクエアの代表取締役

中道通り商店会会長、吉祥寺活性化協議会副会長



ABOUT /  坂井健司さん



略歴 高校時代から吉祥寺の街を遊び場に育ったこともあり、2002年企画運営会社を吉祥寺にて起業し、2005年中道通りに日本茶カフェ「おちゃらか」を出店したことを機に商店会活動を開始されています。

協同ネットの若者たちは、今年の年始に「武蔵野吉祥七福神めぐり」にボランティアスタッフとして参加させていただきました。昨年は他にも「青空市」や「なかよし祭り」など武蔵野市で開催されるイベントに沢山参加させていただいており、コロナ禍でイベントのない今の日常をとても寂しく感じています。

そんな中で、これからも武蔵野市との繋がりをつくり続けたいという思いと、勉強させていただきたい気持ちも含めて、今回は武蔵野市の地域活動で活躍されている坂井さんにお越しいただきました。


若者(インタビュアー)


なつみかん:ベーカリー研修を経て、現在はカフェ店勤務。地域の人たちにおいしいコーヒーを日々入れながら、将来は自分で店を出したいと考え、現在情報収集中。

おとくさん: DTP研修を経て、DTPデザインやグラフィックデザインの分野で働くことを目指し、現在就職活動中。

さっちゃん:おとくさんと同様、DTP研修を終えたばかり。現在、NPO法人わかもの就労ネットワークの「DEXIT」に登録し、就職を見据え、職場体験中。


スタッフ(インタビュアー)

廣瀬、丸山


八十で引退してから二十年間は、老後を楽しく過ごすための時間(笑)



坂井 いろいろ経験して今があって、いろんな人たちが周りにいて。

今、僕がこういう風に生かされてることを考えると、残りあと10年位はちょっと力を使わないと駄目なのかなと思うんですよ。来年60だし。

だからあと11年の間に仕組みを作って、次の世代に渡せれば良いかなって。


30代とか40代の時って、ケツをあんまり考えないで、逆算で動いてなかったんです。

でも、僕一応、100歳まで生きるつもりで、するとあと41年あるんですよ。70までに仕組みを作って。70から80の10年間は、その仕組みを渡した人たちが上手くやれるかサポートして。で、80で引退してから20年間は、老後を楽しく過ごすための時間(笑)

地域活動やるにしても、その地域活動は事業化しなきゃいけないと思ってるんですね。関わった人たちが皆ハッピーになれるような、事業化の仕方ってのはあるかなとは思うんです。なのでそこは仕組みとして作ってみたいなと。


廣瀬 まだまだやれる事や実現したいことがあるって、幸せな事ですもんね。

坂井 そうですね。ほんとここ1、2年で、そういうビジョンが見えてきたっていうか。

3、4年前までは半信半疑だったんですよ、自分もね。でも段々深入りすればするほど、これは僕のやりたかった事だったんだなっていうのが、見えてきたっていうことですかね。


廣瀬 それが一人ではなく、一緒にやる人たちがいるんですよね。

坂井 うん、そうですね。一人じゃできないし、いろんな考えの人が沢山いるわけじゃないですか。そういういろんな個性を、ひとまとめにするのは大変な作業だけど、ある程度まとまってくれば、それが形になったりとか、方向性が見えてくる。

先ほど言ったように、街の三代目・四代目の、30代・40代のキーマンたちが、未来の吉祥寺っていうものをどうしていくかって話してるから、僕が抜けても勝手に動いてくれるっていうのはもう分かってるんですよ。

その30代・40代の人たちっていうのは、オヤジ世代が強いから、なかなかオヤジ世代に物申せないですよ。でもね、僕は外からきて、ガチャガチャテクニックも使ってかき混ぜてるので「かき混ぜていいんだ」って思ってもらえる。




僕が勝手にやったみたいに、君たちも勝手にやっていいんだよって



坂井 例えばイベントとかをずっと30年、同じようにやってきたことを「これからもこれでホントに良いの?」って、その世代の人たちに聞けば、「いや、やっぱ変えたほうがいい」って言う。

でも変えていいって言われてない。親相手だと、なかなか反抗できないじゃない。

でも変えていいんだって、気づいてくれれば動くんですよ、皆。


それは、僕が動かしちゃえば、新しい風が吹くだろうと思うの。実際にもう次の世代の子たちが動き始めてるわけですからね。そういうサイクルは他の色んな所でも起きているんだと思うんですよ。僕の会社でもそれは起こしてることだし。


周りの大人が逆に聞いてあげないと駄目ですよね。若い人たちのことをね、否定するんじゃなくて。

そういうアプローチ多いじゃないですか、世の中。出る杭は打たれるとか言うし。

「世代間格差」ってあると思うんですけど。認めてあげるってことが大事かなって思います

ね、きれいごとじゃなくて。


もっと言うと僕なんかは

「同じようにやってくれなくて結構です」って。

「道は開けるからあとは好きにやってよ」って、感覚ですよね。

「僕が勝手にやったみたいに、君たちも勝手にやっていいんだよ」

っていう事だけは伝えたいなとは思います。


廣瀬 先ほど仰っていた前田さんから引き継いだ「継承していきたい」という坂井さんの吉祥寺への思いは、今度は坂井さんが関わる若い人たちに、「継承していきたいよな」と繋がっていくのだと感じました。

街って、やっぱり人。人とその思いが繋がっていく。


坂井 そうですね。僕自身、そういう繋がりがわかるようにかるようになったのも、もういい年になってからだと思ってるんですよ。

まだ若いうちは、わからない事沢山あると思うんだけど。

どっかで気づきが起きた時に、そこでなにかアクションを起こすのか?それともスルーしちゃうのか?で、また人間って価値が違っちゃうと思う。


僕はどっちかっていうと「ガチャガチャ動くタイプ」なので、すぐ動いて、失敗して、あとから反省するってのを繰り返しやってきた感じですけどね。




インタビューを終えて

若者感想

なつみかん



僕は数年前から、カフェを起業する事を目標にしています。なので今回のインタビューの話を聞いて、面白そうだなと思い参加しました。

僕が社会に出て働き始めて5年余り、その間、個人的に何人かの起業家さんや社長さんに話を伺ったりしましたが、あまり響くものはありませんでした。しかし今回、坂井さんのお話は違いました。それは多分、坂井さんが、あくまで「吉祥寺のため」にこだわって活動している、という話を聞けたからだと思います。ほかの方にそういう事をおっしゃる方は、僕が聞いた人達の中にはいませんでした。

僕の目標は確かにカフェですが、他にも夢があって、その一つに、僕の地元にはレジャー施設がほとんど無いので、地元に映画館を建てたい、というものがあります。僕を育ててくれた地元に、そういう形で恩返しがしたい、そう思っていました。

何がどのくらいかかるとか、まだ全然わからず、漠然とした夢でしかありませんし、僕がやらずとも、そのうち建つかもしれません。僕は別に金持ちになりたいのではなく、稼ぎは少なくてもいいから、地元やそこに住んでる人達に寄り添った人生を送りたいと、常々そう思ってきました。でも、なかなか肯定されることはありませんでした。

でも今回話を聞いていて、自分のやりたいようにやっていいんだと、背中を押してもらったような気がしました。



さっちゃん



DTPの集中訓練プログラムを終え数ヶ月後。仕事に就かなければと思いながらも中々一歩踏み出せずにいた時期に、今回のインタビューの機会を頂きました。

現在も最前線で働かれている坂井さんの仕事に対する思いや考え方を聞いて、少しでも「仕事」に向かうエネルギーを頂ければと思い参加しました。

私は、やりたいことが見つからない今の自分を責めたりしていたんですが、坂井さんが「やりたいことが見えてきたのは最近のこと」とおっしゃっていて、長い間仕事をされている坂井さんでもすぐに見つかるものではないんだと感じることが出来ました。

「オヤジ世代に物申せない」話をされていたことも印象的でした。私は年上の方や上司、会社に従わなければいけない感覚が強く、それが仕事に踏み出せない理由の一つなんだと思うんですが、でも坂井さんは「(今までやってきたイベント等を)つまらないなら変えていいんだ」とか、「周りの大人が逆に聞いてあげないと駄目ですよね、否定するんじゃなく」、「認めてあげるってことが、大事かなって思います」とおっしゃっていて、若い人の意見を押さえつけるのではなく、話を聞いて尊重することを意識しながら仕事をされていると感じました。

私は、仕事をしていない負い目を感じることがありますが、特に仕事を「普通に」している人はそういう状況を悪いものだとみなすんじゃないかというイメージが強いです。しかし坂井さんは「仕事をしてなきゃいけない理由も、僕はないと思っていて」、「生きる道っていうのは人それぞれ」とその人その人の生き方を認める考えを持ってらっしゃって、そういう考えを持っている方がいると思うと少し気が楽になりました。

また起業についての話で、「動いてからじゃないと始まらない」とおっしゃっていて、中々仕事への一歩が踏み出せない私にとって大事な考え方だと思いました。

他にも仕事のやりがいや上手く行かない時の心構え等、仕事を通して実際に経験されたこと、意識されていることを聞くことが出来ました。

これからの就職活動で勇気が出ない時や行き詰った時、今回の坂井さんの言葉を思い出して前を向いて進んで行きたいと思います。


おとくさん



私が今回坂井さんの話の中で印象に残ったのは、坂井さんの「ここ1~2年で、やりたい事がこれ(吉祥寺の地域活動)だったんだなってやっと分かった」という言葉です。

何故そこが印象に残ったかというと、私は「やりたい事がこれ!」と言えなければいけない様な気が漠然としていたからです。

私は現在就職活動中ですが、絵が描けるので、デザイン関係のお仕事をやってみたいと思って探しています。でもそれほど自信はなく、本当にこれで良いのかと思い、迷いながら活動をしています。

しかし今回の坂井さんの話で「別に正解がある訳じゃないから。正解を求めなくてもいいんじゃないかな」という言葉に勇気を貰いました。別に今すぐ、これがやりたい事と言えないといけないわけではないんだと気付きました。

やってみて、行動して、いろんな事を経験してそれから見えてくることもあるんだと坂井さんは教えてくださいました。

今回坂井さんは、「吉祥寺愛」を語ってもらう事は勿論、熱い人柄や、人生の先輩としての話を聞けて感謝しています。ありがとうございました。

Youth Lab

1974年より、子どもたちの学習支援や不登校児童の居場所づくり、 若者の社会参加や就労支援を行ってきた、 文化学習協同ネットワーク(認定NPO)と若者たちが出会う人や世界について、 そして、若者たちが自分自身を再発見するための学びの時間について発信していきたいと思います。