ムサシノPeople interview vol.1 ②


ムサシノPeople interview 


私たちが暮らしている地域には、人や街を大切に思いながら日々活躍している方々がたくさんいらっしゃいます。協同ネットに集い活動している若者たちも、そういった地域の方々に日頃から大変お世話になっています。

そんな若者たちが、日頃お世話になっている地域の方々のこれまでの人生にフォーカスしたお話を、インタビューでお聞きすることで、再び出会い直し、たくさんの刺激を受け、「人生について考え学びたい!そしてもっともっと知り合いになりたい!」という、ちょっぴり図々しい連載企画です。



ムサシノPeople interview vol.1 ②

社会福祉法人武蔵野 特別養護老人ホーム ゆとりえ

施設長 都賀田 一馬(つがた かずま)さん


ABOUT  / ゆとりえ

社会福祉法人武蔵野 特別養護老人ホーム「ゆとりえ」には、これまで協同ネットに集う多くの若者たちが職場体験実習という形で大変お世話になってきました。現在も、2名の若者がシーツ交換のアルバイトスタッフとして働いています。そんな若者たちを理解し、いつも温かく見守ってくれているのが施設長の都賀田さんです。







若者(インタビュアー)

Aさん:風のすみかでのベーカリー研修を経て、現在カフェ勤務

Bさん: 風のすみかでのベーカリー研修を経て、8月より事務職で就職

Cさん:風のすみかでのベーカリー研修(7月スタート)に参加中


スタッフ(インタビュアー)

廣瀬、丸山




今の自分を支えているもの


都賀田 主任になり、係長になり、施設長になる段階でけっこう苦しい時期が何度もあって。現場から離れて管理職になった時に、自分がこの仕事をやるうえで自分を支えてくれる感覚が段々失われて楽しさがなくなっていくわけ。何が楽しいっていうと、人と接して、大変な思いをしている人がなんとか生活が立ち直っていった時に喜びを感じるんだけど。現場がなくなってきたとき結構きつかった。

そんなときにいろんな活動してる人に出会えたんだよね。仕事以外の人と繋がりが出来て、自分を支えてくれて、今に至る感じです。

何が今の自分の気持ちを支えてるかっていうと、例えば朝食のお皿を下げに行くんです。そこで入居者や職員の様子をみて、その人たちのために働いてるって実感を持つことと、それからプライベートでいろんな活動すること。自分の時間の5パーセントが残りの95パーセントの面白いとは思えない仕事を支えてるっていう話で。

その5パーセントを大事にしないと、と思って頑張っているところです




まちをよくする活動に参加


→地域活動にどんな思いをもっていらっしゃいますか?


都賀田 それまで仕事と家だけだったのね。さっきの苦しかった時期に、ほかの市民活動している人たちに出会ったときに、自分は専門職としてある程度専門性も身についてプロになってきたんだけど、この仕事は福祉でまちをよくするっていうのがニーズなわけだけど、福祉だけではできないとすごい強く感じてた。

そのころにいろんな人に出会えた。例えば隣のおばあちゃんに声かける人は、やっぱり自分が住んでるまちが好きじゃないと声かけない。けど、好きだったら声かける。そういうまちにしたい時にどうしたらいいかって考えたら、自分のまちが面白い興味があるまちって思ってもらわないといけない。そしてそのための活動をやってる人が一人でも多い方がいい。

サポステもそうだけどそういうことしてる人たちのこと意外と知らない。いろんな人の働きを知ってもらいたいっていうのがあります。





「社会福祉法人 ゆとりえ」でのふれあい



→「ゆとりえ」のボランティアさんが本当に色んな事をやってくださっているのは、都賀田さんがここにいらっしゃる前からあったことなんですか?



都賀田 ゆとりえの場合は住人の「こういう施設を作ってほしい」っていう陳情から始まったの。それが採択されてここをどんな施設にするかっていう話し合いから、地域の人たちはどういうふうに施設に関わろうかとか。ここの庭の木も全部ボランティアさんが決めてくれたんだけど、全てのことがそうやって始まったから、最初から地域の人達がやる気満々でここを支えてくれたのね。

他の所はスタッフ除いて、ボランティアはゼロのところがほとんどだから。今、のべ3000人くらいになっちゃったんだけど、当時はもっと多くて2000人くらい減っているんですよ。当然、20数年たって…。




→以前お邪魔したとき、ボランティアの方専用のロッカーがあって驚きました。


都賀田 作る時の熱を持った人たちはそのまま持っているけど、それを知らない若い人たちは分かんないから。そういう人たちをどうやって巻き込むか。

だから本当はこの夏の私の最大の目標は、夏休みにおじいちゃんおばあちゃんとかお父さんお母さんとお孫さんが、一緒に下膳に来てもらうことだった。

それで貰ったポイントためて、一緒にお菓子屋さんでケーキ買ったり、レストランでご飯食べたり、「僕が働いて稼いだお金でお父さんお母さんご飯食べようよっ」ていうのが夢だった。潰れたの。コロナで(笑)。出入り禁止だから。残念です。絶対できるはずだった。





人との縁と面白さを大事にしたい



→一つのところに留まっていないで、ほんの少しでもやらないよりもやってみようとしているってことでしょうか?



都賀田 思ってるのは、やった自分とやらない自分の一年後は結構比較するかな。

アンテナはいつも立ててる。こうだったらいいなぁ、こうだったら面白い、この方がいいのに、っていうアンテナはいつも立ててる。そのときにやらなきゃ何も起きない、でそのときに一年後の自分を考えたら、まぁやった方がいいな、ってなる。明らかに今の自分とはそれだけで違う。

何かやると自分の思うようにはいかないし、嫌な思いはするし。自分の配慮の無さで相手に嫌な思いさせるし、やんなきゃこんな気持ちになんなかったとか、やんなきゃよかったなとか。でもやんなきゃよかったって思ったことはないか。結果的にやってよかったって常に思うの。

100点の答えは絶対に出ないから、それがたとえ30点でもやったことでゼロではない。まちを良くするって言ったって、一人がなんかやっても大して変わんないわけよ。それを支えてんのは、やればゼロではない。1は少なくともあるだろう、ってのがある。

それは仕事でもプライベートでも同じかな。100を出せるようなこの人すごいなって思えるような人が街中にいて、でも自分は100のスーパースターにはなれそうにないって思って。だけど、1ができる100人の仲間にはなりたいってのは常に思ってる。だから、1できれば0じゃなきゃいいから行動してみる、そしたら絶対一年後の自分は、今の自分と違うっていう、その積み重ねかな。あるとしたら。

ある日何かがあって・・・じゃなくて、その積み重ねが経験かな。




「自分がどう振る舞うとこの場が一番良くなるか」考える



→私は人と関わることで相手を通して自分が分かっちゃうから苦しくなったり、相手の気持ちが分からなくなって疲れちゃうことがあるんですけど、そういうことはありませんか?



都賀田 元々ね、人見知りだったし、自分から人との場に入っていくタイプではないし、いろんな人とおしゃべりするタイプでは全然ないです。一歩踏み出すのは結構重いの。「面倒くさーい」って言って。

活動の関わり方は例えば、基本的に今3つあんの。オモチャ交換を中心とするマルシェとか、そういう活動。それから武蔵境にある雑木林を保全する活動。もう1個はアートプロジェクトにかかわる活動の3つが柱なんだけど。そのグループとか人の集まりの中で自分のポジションって変わってくる。

いつも私は私なんだけど、そこにリーダー的な人がいたら私がリーダーやる必要はないから、その人のサポートに回る。だけど、他にリーダーがいなかったら、私がリーダーになろうとか。対立する二人がいるのが分かっていたら、私はそこを仲裁する役に回ろうとか。

いるメンバーで、そこにいる人で自分の役割は結構変わってくるわけで、それはみんなも変わるわけ。そういう人も含めていろんな人が集まっているときに、自分がどういうふうに振る舞うとこの場が一番良くなるかっていうのは考える。



「何とかなるだろう」自分のセンサーを信じてる



→「自分はこういうタイプの人間なんだ」っていう理解ができているってことでしょうか?



都賀田 それは、無くはないけど、昔からあったわけでは無い。昔は、自分の性格は面倒くさがりの完璧主義者で、白か黒かを決めるタイプ。勝つか負けるかっていう価値観で生きているって思っていたの。それで私がその20代の頃の自分を見たときに、「おまえその時はそれで正しかったと思うし、それで良かったと思う。だから今の自分があるからいいんだけど、でも本当は自分の中にこんなのも持っていたんだよ」って言ってあげたい。

だからその時の自分は大事にするし、そこに後悔はしないけど。

だけどね、どっかね。自分を信じているの。それがね、自分の長所だと思っているんだけど。自信って、なんか何でもできるから自信なんじゃなくて。失敗もするかもしれないし、なんでもかんでも上手くできるわけじゃないけど。

でも何とかなるだろう、そんなに人として変じゃないとか、そんなにひどい奴じゃないとか、いうレベルの自分を信じているところがある。だから20代の苦しかった時に死なずに済んだのかなと。たぶん、一生分からないんじゃない、自分のことなんて。わかんないけど、そこは自分の感情の動きに任せているところがあって。

それをつくってきたのは、そういう勉強とか知識とかじゃなくって、たぶん子供の時に野山で遊んだこととか、朝日見たこととか、空がきれいだったとか。近所のおじいちゃんおばあちゃんとか、近所のオッチャンに腕掴まれて「おっきくなったなあ」っていわれたこととか、お祭りの酔っぱらいのオッチャン達と遊んだこととか。

そんなことの積み重ねの中でできたセンサーなんだよね。

よくね、その仕事の中で「それはやったことが無いから出来ません」っていう人とかいるけども。「それ教えてもらわないとできません」とか「マニュアル無いんですか」とかもあるんだけど。いやいやあなた今までこんな色んな仕事してきたんだから、それの財産がベースにあるじゃん。だからできなくないよって言いたいとこなんだけど。そこまでやってきたものが0になるわけじゃないから、っていうのはどっかにある。

いろんな経験を面白がってもらいたい。面白いことは目の前に一杯転がっているから。





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Youth Lab

1974年より、子どもたちの学習支援や不登校児童の居場所づくり、 若者の社会参加や就労支援を行ってきた、 文化学習協同ネットワーク(認定NPO)と若者たちが出会う人や世界について、 そして、若者たちが自分自身を再発見するための学びの時間について発信していきたいと思います。