ムサシノPeople interview vol.3②【最終話】



ムサシノPeople interview


私たちが暮らしている地域には、人や街を大切に思いながら日々活躍している方々がたくさんいらっしゃいます。協同ネットに集い活動している若者たちも、そういった地域の方々に日頃から大変お世話になっています。

そんな日頃お世話になっている地域の方々のこれまでの人生にフォーカスしたお話をお聞きすることで、再び出会い直し、たくさんの刺激を受け、人生について考え学びたい!そしてもっともっと知り合いになりたい!という、ちょっぴり図々しい連載企画です。


ムサシノPeople interview vol.3②

武蔵野市役所 総合政策部 部長 吉清 雅英 さん


ABOUT / 吉清雅英 さん


平成6年に武蔵野市役所に入職後、27年間に渡り、市役所職員として勤務されています。

当法人(NPO法人文化学習協同ネットワーク)に関わっていただくようになったのは平成27年から。当法人が受託している「武蔵野市引きこもりサポート事業それいゆ」は、27年当時、障害者福祉課の管轄で(令和3年度より生活福祉課へ移管)、障害者福祉課時代に二年間お世話になったのが、出会いのきっかけでした。当時は、それいゆ事業である「フットサル」や「家族セミナー」「フォーラム」を通して、メンバーやスタッフと積極的に交流をしていただきました。

現在は、市役所退勤後に「武蔵野市若者サポート事業 みらいる」や「むさしの地域若者サポートステーションOBOG会 リスタ」にも立ち寄っていただき、「フォーラム」等イベントにも毎年継続的にご参加いただいています。

特にOBOG会の「リスタ」では、「市役所の吉清さん」ではなく「リスタメンバーの吉清さん」の立ち位置で、若者たちと同じ目線に立ち、一緒に場をつくってくれています。時にはお菓子を差し入れしてくれたり。そんな日頃から若者ともども大変お世話になっている吉清さんに今回はお話を伺いました。



若者(インタビュアー)

Yさん:大学生。現在は、当法人の学習塾で有償ボランティアをしている。

Aさん:3年ほど前からサポステを利用中。サポステのPC教室講師を経て、サポステHP作成プログラムに参加しながら、地域のNPOで学習支援のアルバイトを開始。

Sさん:4年ほど前からサポステを利用中。サポステのPC教室講師を経て、これまでの半年間は求職者支援訓練でITの訓練を受けていた。現在、IT企業での職場体験に参加中。


スタッフ(インタビュアー)

廣瀬、丸山




業者さんが出入りするところから、じっと白衣を着て「石ころ」のようにしていることからはじめる。



吉清 意外に自分は居ることは得意なんだと思った。

子ども協会時代に。例えば保育園の給食調理って、狭い空間で独立しているから、知るために見学に行かなきゃと思った。でも「視察」というもの自体が苦手で。

だから、保育園の調理の現場も朝8時過ぎからじっと白衣を着て「石ころ」のようにしていることからはじめる。

そうすると、業者さんが朝搬入したり出入りをする。生野菜を出せないから、野菜を蒸して…とか。その時に「あ、鮭も洗うんだ」と。じっと、見ている。

そうすると、段々と話しかけてもらえるようになる。そうやって、敬意をもってその場に居ることで、少なくともそれまでよりお互いに関心を持てるし関係性ができる。





吉清 アールブリュット展でも、アトリエ等を運営されている人に委員に加わっていただけるよう声掛けをさせて貰うこともあった。初めて会うし、その時もアトリエの教室を石ころのようにじっとしてみている。そうすると、段々と声をかけてもらえる。段々と質問してもらえる。



廣瀬 立場上、管理的に思われてしまうんですものね。

吉清 そう。でもそれ(視察)って面白くないですよね。だから自分のやり方で行くんだけど、内心はドキドキして自信がない中でいつも行っている。プライベートで知らないおじさんならできない事ですよ、怪しさしかない(笑)これは、仕事じゃなきゃできない事だと思いますし、仕事ならではの楽しみ。




「何かをしたい」「何か考えたい」と思った時に、そうやって孤立せず繋がれる地域でありたいと考えている。



A 「武蔵野市の特徴」と「今後どういう地域を目指しているか?」を教えて欲しい。実は自分たちは「地域ってなんで大事?」と思っている。これまでも正直、地域のつながりを意識をして生きてきていない。だからこそ、この質問をしたいと思った。

廣瀬 私たちはどうしても仕事柄、「地域」「地域」と言ってしまうが、若者たちは、「地域の繋がり」を感じられないで生きている。吉清さんにとっての「地域」は聞いてみたい。




吉清 武蔵野市は比較的に言うと、お金がある地域だと思う。でも「豊かさ」ってなんだろう?

一定豊かさはあっていいと思う。例えば自分が金銭・交友も不自由なく過ごせていて、でもその一方でその地域に虐待があり、受けられる学習が受けられていない人がいたとしたら…そういった地域は豊かな地域だと思えない。そういう意味で、この武蔵野市を豊かな地域にしていきたいと考えている。そういう方向に繋がることを支援したいと考えている。

自分でやりたいことを見つけて進められる方じゃないので、誰かの実現をしたいことに力を貸すことができると嬉しいかな。



「何かをしたい」「何か考えたい」と思った時に、そうやって孤立せず繋がれる地域でありたいと考えている。




インタビューを終えて

若者感想

Sさん


初めから公務員や市役所で働くことを目指していたわけでは無く、他分野での就職活動をしていたと聞き、意外に思った。公務員になるのは大層立派な理念を持っている人、もしくは安定した生活を目当てに長期的に計画しているような人だと思っていたためだ。その後、動機の不十分さを感じて考え直し、企業という利益を追求する必要がある組織ではモチベーションが続かないかもしれないと思ったこと、そして町づくりに関心があったことなどを総合して市役所職員を目指したともお話しいただき、福祉や人と接する仕事のおもしろさについては市役所職員として様々な部署の仕事をするうちに発見されたように受け取った。

これらのことから、自分が就職活動をする際も最初から「これをやりたい」「これが得意」と言い切れる必要は無く、ちょっとした興味から行動してみるのも選択肢の一つであり、行動していくうちに見えて来るものもあるのではないかと思った。

仕事のモチベーションについても伺ったところ「自分の能力を活かせたら、人の役に立てたら嬉しい」とお答えいただき、その通りだと思った。単純で当然のようだが、モチベーションには仕事内容自体を自分が楽しいと思えるかどうかが重要だと考えるようになってしまっていたため、良い言葉を聞けたように思う。

今回のインタビューを通して、思い込みや、こうしなければいけないというような考えがほぐれた。ありがとうございました。


Yさん

市役所の方の仕事の中身が具体的に聞ける良い機会となりました。有難うございました。今回、お話を伺って、一口に市役所の仕事と言っても、様々なものがあり、その中でも吉清さんは、現場との関わりを大事にされていること、そして、人と人とを繋げる調整役の仕事を市役所が担っていることがよくわかりました。進路選択のお話しに関しても、等身大の吉清さんを垣間見ることができ、参考になりました。



Aさん

どうせ給料もらうんだったら、人の役に立ちたいという言葉に、共感して、なるほど自分もそれだったらもてるなと思えた。

なんかちょっと不幸だったり、いじめが発生するなら嫌だし、幸せでいて欲しい。それも地域の一つだと思えた。それぐらいならあるなと思えた。

吉清さんに聞いた話は、志望動機の話や仕事をしながらやりがいを見つけた話など、とても興味深い反面、中々始められない、それからやらない理由を探してしまう自分にとって、少し耳の痛い話でもありました。。

それでも、市役所の中で部署替えごとに色々な仕事に就いていった経験や、その中で自分のやり方を作っていった話は、自分もこんな風にやりがいや関心を見つけていけたらなといい刺激になったと思います。他にも、リスタに今も来ている理由など、仕事をする上でのモチベーションの話は納得とともに、自分にそんな風な仕事できるのかなとも思ってしまいました。

吉清さんに地域の話を聞いたときの返答も印象深かった。あまり地域という意識の無い若者に対して、自分の経験なども交えて、率直に話してくれました。話の中で聞いた、地域に対しての、幸せになれるのなら交流は少なくてもいいといった話もあった。ただ、そのあとに聞いた、自分が幸せに暮らしている隣で、苦しい生活を送る人がいたとする、それは幸せだろうか?という話は、確かにと思う面が大きく印象にのこりました。

今回は仕事の話から、自分の来歴の話まで、とても豊富な内容を聞かせて貰えました。ありがとうございます。



Youth Lab

1974年より、子どもたちの学習支援や不登校児童の居場所づくり、 若者の社会参加や就労支援を行ってきた、 文化学習協同ネットワーク(認定NPO)と若者たちが出会う人や世界について、 そして、若者たちが自分自身を再発見するための学びの時間について発信していきたいと思います。