ムサシノPeople interview番外編 feat.中道通り商店会 其の五


ムサシノPeople interview

私たちが暮らしている地域には、人や街を大切に思いながら日々活躍している方々がたくさんいらっしゃいます。協同ネットに集い活動している若者たちも、そういった地域の方々に日頃から大変お世話になっています。

そんな日頃お世話になっている地域の方々のこれまでの人生にフォーカスしたお話をお聞きすることで、再び出会い直し、たくさんの刺激を受け、人生について考え学びたい!そしてもっともっと知り合いになりたい!という、ちょっぴり図々しい連載企画です。


中道通り商店会コラボ企画 「茶話会 地域の人に出会おう!」


2020年のムサシノPeople interviewで、中道通り商店会会長の坂井さんへ若者がインタビューをしたご縁から、コロナ禍でイベント開催ができない中、武蔵野の地域で若者と地域のみなさんが出会う機会がつくれないか坂井さんに相談してきました。


今できることは「出会い、話すこと」。


そこで、定期的に中道通り商店会のみなさんをお招きし若者ともに茶話会を開くことで、商店会の人たちと出会い、価値観や視野を広げる機会にしていこう、そして、お互いに声を掛け合えるようなかかわりのきっかけにしたいよね、と2021年7月に第一回目を開催。


現在、2か月に一度のペースで開催しており、今後継続的にYouth Lab内にて『ムサシノPeople interview番外編 feat.中道通り商店会』 と銘打ち発信していきたいと思います。


吉祥寺中道通り商店会HP

https://kichijoji-nakamichi.com/




PearlsWhiteHPより

ムサシノPeople interview番外編 feat.中道通り商店会 其の五

有限会社 宝飾ホワイト / Pearls White パールズホワイト 

取締役 宝石主治医 久保田智之 さん


PearlsWhiteHPより

ABOUT / Pearls White


東京、吉祥寺のジュエリーショップとして1982年から 修理・リフォームからオーダーメイドまで『宝石の主治医』として、お客様との長いお付き合いを目指しているお店です。


若者

Fさん、Kさん、Sさん、Iさん、Tさん、Yさん、Mさん 


中道通り商店会

会長 坂井さん


スタッフ

廣瀬、小野田



実際人と関わるのは苦手…父が亡くなって店をたたむことになった時、人と一対一でふれあう接客っていいなと思った。


2001年に大学を卒業した久保田さん。就職先は、本が好きだったこともあり、出版卸の仕事へ。7年間の人事部での労務管理の仕事を経て、現在の仕事へ独立。「会社員時代の仕事は楽しかった。パソコンや社員を相手にする、人と関わらないない内向きの仕事だった。一方でとても周りの人にかわいがってもらった」と当時を振り返ります。

現在の久保田さんのお客様相手のお仕事は、180度転換したようにも見えます。若者たちそれぞれが、これからの進路選択への不安を感じながら参加してくれているため、大きな決断をしてこられた久保田さんに対して、様々な質問が飛び交いました。久保田さんは、そんな若者たちからのどんな質問に対しても、終始とても率直に、わかりやすい言葉を用いながら若者たちに語り掛けます。そこから感じる熱っぽさと誠実さが、若者たちの心に響きます。



接客って楽しいですか?

「僕は大嫌い。お客さんとの相性もあるし…会社時代に学んだことは簡単にいうと『世渡り』。どうすればかわいがってもらえるか。人に好かれるかの技術とか根回しとかを学んだ気がする。ずっと会社にいれば、かわいがってもらっていたので今よりいいお給料をもらっていただろう。でも後悔はない。実際人と関わるのは苦手。学生時代の友達もいなかった。だからこそ、自分にとって居心地のいい状態とは何か?というところで考えて、今の店を構えた」

きっかけはお父様が亡くなった時だったといいます。「接客は嫌いだし『こんな仕事したくねぇな』と思いながら手伝っていた。一方でずっとビジネスの勉強はしていた。父が亡くなって店をたたむことになった時、皆さんが泣いてくれて…『人と一対一でふれあう接客っていいな』と思った。父が亡くなっても人脈はあるし、お金も残してくれていたので、一念発起して1年間かけて勉強し宝石屋になった。周囲からは反対されたが、今は何とか食っていけるくらいにはなった」



宝石主治医


「ふだん近くにいて、信頼されるホームドクターになりたいと思った。修理をちゃんとやろうということと、リフォームをやろう、と思っていた。この仕事は、家族が引き継いで残っていくものを作ること、そしてその提案をすることが主な仕事だと考えている。自分の手に負えないようなすごいものを作るときには師匠に頼むなど、継続的な関係性を作ってきている。自分と家族が食っていけるくらいは稼げている」

「正直、接客は嫌い。時にはむかついてしまうようなお客様もいる。自分はガラスのハートの持ち主なので、無理だと思ったら一定の距離を置かせてもらうこともある。難しいと判断せざる負えない仕事や嫌な仕事は受けない。受けていたら年商は今の1.5倍はあると思う」



本は好きと仰っていたが?

「若い頃は古びた喫茶店で村上春樹を読むようなタイプ。内省的な小説が好き。今は直木賞を取るようなエンターテインメントが好き。司馬遼太郎の影響を受けている」

「出版卸の人事の仕事だったので実際に本とは関われなかったが『人事部のエース』と呼ばれていた。給料とかお金を取りまとめる仕事をしていたが、めちゃくちゃミスもしまくった。でも、凹みまくってもどうにかなるもの。1度ミスをすると同じミスはしないし、仕事の効率化も思い切り図ったので、会社内からも頼られていたと思う」



ものづくりに元々興味があったんですか?

「ないです。自分に合った仕事とか向いている仕事とかってないと思っている。自分がいま一番居心地がいい場所にいるだけ。僕が宝石屋でいる理由って一つもない。絵心は小学校3年生並み、センスがない。但し『それがその人に似合っているか』という感覚はすごく得意」

「『どうしたい?』を聞いてお客さんとのヒヤリングでベターなものを探っていく。お客さんの好みを聞き出して作品にする。かっこいいものなんて一切作っていない。目の前にあるリソースやタイミングがどう自分にマッチングするかが大切」

「社会的にどうだとか志がどうだ、などという事は思っていないが、自分は目の前のお客さん一人一人にちゃんと感謝される仕事ができているかだと思う。独立する時にある社長さんから『売上高はお客さんからの感謝のしるし。それを上げることを目指さないといい仕事はできない』と言われた。接客は嫌いだけど感謝されることは大好き。因みに、なぜ『パール』かというと、皆さん持っているから。名前に付けたら『パールさんに行けばいい』ということになる」



お父さんはなぜ真珠だったのか?

「父の死が急だったのでそういう話はできなかった。なんのために働くのかを感じた方がいい、しっかりと稼げることも大切なんだと思う」



自分で決めることが大事。


この仕事でなければ1.5倍のお給料をもらっていたと言っていたがなぜこちらを選んだのか?

「まずは、満員電車が大嫌いだったから。転勤を伴う仕事だったので引っ越しもできずということもあった。世渡りが出来る方ではあるが疲れるから嫌なので、自分の裁量で働ける方が楽がと考えている。働き方を自分で決められる。お給料にしたって全体のバランスを見ながら変えられる。ここから先稼げるチャンスもある。出来るだけ働きたくなくてどうしたら楽が出来るかを考えている」

「会社を辞めたのは逃げたわけではなく、もっと居心地のいいところに行きたかっただけ。そんなにストレス溜めてもしょうがない。自分は人と関わるのは嫌いだから、特にやりたいことをやろうという気持ちが強い。最近特に病んでいて植物に話しかけている。時には山に登ったりもする、自分の力で何とか出来るところがいい。自分のはけ口というかそういうのは持った方がいい」

「昔はどういう風に人に見られるかを気にしていた。情報って嫌でも入ってくるし、人に惑わされるのって損だと思うから、SNSも全く見ないし気にしない。店の商品についても昔は他店を気にしていたが、今は『自分は適正』と思ってやっているから気にしない。自分の適正に見合った仕事をちゃんとやっていることをお客さんにしっかり伝えている。その他にも仕事の付加価値をつけていくこともしたり、技術に自信をもってやっている。それとリスクを取るようにしている。自分なりの理論もあるので、他の店が断るようなこともやるようにしている」



この12年間でその境地に達したのはなぜ?

「自分の後ろ盾になってくれるよい師匠に出会えたことだと思う。周りに助けてもらっている。最初はめちゃくちゃ失敗するが、ある線を越えると見えるようになる。自分は学校にも行っていないが知識と経験と度胸があれば越えられることがある。最後に必要なのは『ま、いっか』かも」

「真珠の勉強はめちゃくちゃした。めちゃくちゃ割ってだからこそ分かったことがある。新しく何かを始めるなら、その勉強をすること。知識が根底にないと自信をもって語れない。全体を見て自分がどこを目指したいかを考えることが大事。全てのお客さんを喜ばせようとしてもだめ」

「損なうことを恐れたら望む結果が付いてこない。自分で決めることが大事。良いものを安く売るお店だったが、自分は今『こと』を売っている。そのことで感謝してもらえるようになり、楽にもなった。自分で決めたことでそうなった。『家族の思いを紡ぐこと』をどうやって形にしていけるかをヒヤリングから導き出すことをテーマにしている。固定概念は一切抜きにして、考えることがやりがいにつながる。『もの』が何かではなく『こと』が大事。



慎重でものづくりが向いていると言われているが、仕事が遅くて仕事にならないような気がする。そういう人はどうしたらいいか?

「効率を求められるようなものづくりを選ばなければいい。お客さんが求めるのが丁寧さなのか時間なのかというところ。自分も『急いで』と言われたら、イラっとする。そういう時には忙しくてできないとお客さんにはっきり言う。自分にとってストレスのない環境をつくること。自分にとって信頼できる人を見つけて、経験して肯定してもらえたら全然大丈夫」



終始ストレートな言葉で語ってくれた久保田さん。久保田さんの仕事への熱意が、若者たちに深く響きました。

久保田さん、坂井さん、本当に有難うございました!!

PearlsWhiteHPより



Pearls White( パールズホワイト) 久保田 さんのお話しを聞いて
若者感想

●おもしろかったです。グーグルの評価が☆5ばかりで、お客さんを大事にするタイプの方かと想像していたら「ビジネス」と言っていたのでちょっとホッとした。自分も職人に憧れているのでかっこいいなと。勉強が大事という事も共感した。



●私にとっては、とても身近な場所で仕事をしているという方なので興味が沸き、今回参加させていただきました。働いている方に会社の仕事のことは聞けますが、非常にパーソナルな部分に突っ込んでお話を聞くことが今回はできたので、とても貴重なお話でした。

自営業・サラリーマンに関わらず、仕事を続けていくうえで、色々な視野・モチベーションを持つことが大事だなと個人的には思いました。今回はこのような機会を催していただき、誠にありがとうございました。



●まずはじめにお話をお聞きして感じたことは、久保田さんが正直に話して下さっているということです。「コミュニケーションが苦手」「世渡りが疲れる」等、仕事をしていく上で実際には思っていても言ってはならないんじゃないかということまでお話して頂いて、本音で話して頂いていると思うと、仕事に対してのお考えもお聞き出来て、非常にためになりました。

私は、仕事に求められるレベルに自分が達していないんじゃないかとか、賃金を頂いて仕事をするのだから、ミスは許されないんじゃないかと考えてしまいます。久保田さんの「徹底的に勉強することで自信に繋がる」というお話は、中々仕事に対して自信が持てない私にとってのアドバイスになりましたし「ミスをしても誰かが死ぬ訳じゃない、ミスしてもすぐ辞めなかったことが大事」「仕事に必要なことは(知識、技術、)度胸」という言葉もこれから仕事取り組む時に思い出して、勇気に変えたいと思います。

自分の感情を大切にされているお話を聞けたことも良かったです。仕事はどうしても「ねばならないこと」が沢山あり、我慢しながらするイメージが強いです。しかし久保田さんは納期についても自身のペースで行う旨をお客様に伝えたり、自身が仕事をするのが「心地よい状態」であることを大切にされていました。また、プライベートの時間も植物や山登り等、人からどう思われるかではなく自身の感情に正直に過されているのが印象的でした。

 今回お話頂いた内容を心に留めて、仕事に向かっていきたいと思います。



●久保田さんが最後の方で何かを損なうことを恐れず「決める」こと、決めたことを迷わずやることが大事だとおっしゃっていたのが印象的でした。出版のお仕事を辞めたことに後悔がないとおっしゃていたのも、きっと自身でよく考え、分からないことがあれば勉強して自分が納得した道を選んできたからなのではないかな、と思いました。私はどう仕事したいか、生きたいかよく考えたり決めたりせずに流されて今まできたのだと身につまされました。

接客のお話では、苦手だとはお話されていましたが、よくヒアリングしてお客様一人一人が求めているものを知ろうとする丁寧な姿勢がお客様の満足につながっていると思いました。宝飾品という思い入れの強いものを扱うからこそのエピソード、思い出のガラスをリメイクしてリングにしたお話に感動しました。一つ一つの宝飾品にお客様の思い出があり、リメイクによって使う度に昔のことや人を思い出せるだけでなく、リメイクした時の新たな思い出を象徴するものにもなる、その過程に関われる素敵なお仕事だと思いました。

ビジネスの面で経営者としてどんなことを考えてお仕事をしているかのお話も新鮮で面白かったです。

また働く時に私は人の評価を気にしてしまいがちですが自分自身の居心地の良さ、楽にいられることも大事にしていいのだと思いました。



●貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。久保田さんのお話、大変参考になりました。個人的には、「全部に認められようとするとちぐはぐになる」「どうなりたいか決める」「周りにできた縁を大事にする」という言葉が印象に残りました。落ち着いて考えると、自分もそんな風になろうする傾向がある気がするので、少し気を抜いてもいいのではと、少し楽になった気がしました。



●久保田さんが、人とあまり関わらない仕事から人と関わる仕事に移行し、人間関係や能力の面で悩みながらも工夫しながら楽しく仕事をしていることを知りとても刺激的な時間を過ごさせてもらいました。自分の適性を知り自分に合った仕事を選択をしていけたらいいなと思いました。素敵な時間をありがとうございました。


PearlsWhiteHPより


Youth Lab

1974年より、子どもたちの学習支援や不登校児童の居場所づくり、 若者の社会参加や就労支援を行ってきた、 文化学習協同ネットワーク(認定NPO)と若者たちが出会う人や世界について、 そして、若者たちが自分自身を再発見するための学びの時間について発信していきたいと思います。